平成16年度は、dynamic positron autoradiography technique(dPAT)に[^<18>F]FDGを適用することで、ラット新鮮脳切片内のグルコース代謝を経時的な2次元画像情報として描出し、抗精神病薬による脳内グルコース代謝や膜への影響について検討した。その結果、30μMから100μMの比較的低濃度のchlorpromazine(代表的な定型抗精神病薬である)を投与した場合、解糖系の亢進が生じたが、300μM以上の比較的高濃度のchlorpromazineを投与した場合、FDG-6-phosphateが細胞外へ流出した。FDG-6-phosphateはグルコーストランスポーターを通過できないので、この流出は細胞膜の透過性が亢進して、細胞膜に小孔が形成されたことを示唆する所見であると推察された。さらにchlorpromazine投与による細胞外のlactate dehydrogenase(LDH)活性の変化を測定した結果、chlorpromazine投与によるLDHの細胞外への流出時期(致死的な細胞障害の指標である)は、FDG-6-phosphateの細胞外への流出時期に比べて明らかに遅いことが示された。平成17年度以降は、今年度の知見を踏まえ、dPATと分子的アプローチを駆使したさらなる統合的な研究を進め、抗精神病薬による耐糖能異常の発症メカニズムを深く掘り下げていく予定である。
|