研究概要 |
Petersenの診断基準を満たす健忘型軽度認知機能障害(amnestic Mild Cognitive Impairment(aMCI))の患者12例(70.0±5.8歳,MMSE 27.3±2.2,CDR 0.5)、NINCDS-ADRDAのprobable Alzheiner's disease(AD)の診断基準を満たすAD11例(68.5±1.0歳,MMSE 21.3±3.8,CDR,0.5(n=2)or 1.0(n=7))、健常高齢者15名(70.5±49.8歳,MMSE 27.6±2.5,CDR 0)に対して、記憶検査であるWechsler Memory Scale-Revised(WMS-R)と^<123>I-IMP SPECTを施行した。そしてSPMを用いて3群間で脳血流を比較するとともにWMS-Rの一般性記憶スコア(General Memory:GM)と局所脳血流が関連する脳部位を明らかにした。記憶検査の結果は、WMS-RのGMがaMCIにおいてADよりも高得点であった。脳血流低下はaMCI、ADともで、後部帯状回、楔前部、頭頂葉などの両側性の後方連合皮質、左海馬および前頭葉で認められた。両郡の低下のパターンは類似していたが、その範囲はADでより広範であった。WMS-RのGMは、aMCIにおいては、両側海馬、左上頭頂小葉、右舌状回の脳血流と相関した。一方、ADでは、両側後部帯状回、楔前部、上下頭頂小葉の脳血流と相関した。以上より、まず今回対象となったaMCI患者はADに今後移行する患者である可能性が高いと考えられた。さらにADにおいては、aMCIの段階でもADと診断される段階でもともに記憶障害が最も顕著な症状であるが、その脳内の責任部位は、両段階で異なると考えられた。すなわち、aMCIの段階では、記憶の中枢である海馬の障害によって記憶障害が生じると考えられるが、ADの段階では、脳内の様々な領域と線維連絡を有する後部帯状回などの後方連合野の障害によって記憶障害が生じると考えられる。
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