研究課題
基盤研究(C)
アルツハイマー病(AD)の神経病理学的特徴としては神経原線維変化と老人斑の存在が知られており、この神経原線維変化の構成成分は異常リン酸化タウ蛋白であることが知られている。アポトーシスとタウ蛋白リン酸化に関する我々の以前からの研究からカスパーゼ阻害因子が関与するものと推定し、内因性カスパーゼ阻害因子XIAP(X-Chromosome linked Inhibitor of Apoptosis Protein)について検討した。タウ蛋白を発現させたCOS7細胞にアポトーシスを誘導するストレスを導入すると細胞死の増加とタウ蛋白脱リン酸化を認めたが、この細胞にタウ蛋白と同時にXIAPとを共発現させると細胞死の数は減少し細胞中のタウ蛋白はリン酸化レベルの亢進を認めた。次に、タウ蛋白N末端とのXIAPとの結合については、2つのペプチドN-tau-delM(AEPRQEFEVMEDH)およびN-tau(MAEPRQEFEVMED)(どちらもアミノ酸1文字表記)のうちN-tau-delMには結合するが、N-tauには結合しないことが判明した。以上のことは、XLAPがAD脳における変性過程において何らかの関わりを持つこと、特にタウ蛋白リン酸化を含む神経変性機序に関わっている可能性と、タウ蛋白のN末端のMet切断化にともなって細胞死を誘導する可能性とを示唆している。よって、アポトーシス阻害因子という細胞死の過程に逆の働きをしているものがAD脳においては複雑に関与している可能性が示唆された。
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