統合失調症の治療に使われる抗精神病薬は、薬理学的にドーパミンD_2受容体遮断作用を共有する。病型によって抗精神病薬の効果は異なるが、一部の統合失調症の病態生理にドーパミン(以下、DAと略記)が関与している可能性が高い。しかし、統合失調症で機能異常が想定されている内側前頭前皮質においてDAがどのような生理作用をもつか、という問題は未だに解決されていない。最近、統合失調症患者の内側前頭前皮質において、特定亜型のGABA作動性抑制神経細胞の脱落、機能低下が報告され、抑制の異常が統合失調症で想定されている。 本研究では、ラット脳前頭前皮質スライスを用いて、GABA作動性神経細胞に対するDAの効果を電気生理学的に検討中であり、平成16年度は以下の結果を得た。 1)DAのGABA作動性シナプス伝達に対する効果 内側前頭前皮質の第5層錐体細胞から微小抑制性シナプス後性電流をホールセル記録し、GABA性シナプス活動に対するDA(20μM)の効果を解析した。 A.解析したすべての錐体細胞において、DAはGABA性シナプスからのGABA放出を抑制した。 B.GABA_A受容体感受性については錐体細胞によって異なり、増強、減弱という相反する効果が認められ、シナプス前のGABA作動性抑制細胞の亜型の違いに対応したDA感受性の相違が示唆された。 2)DAのGABA作動性抑制神経細胞の活動性に対する効果 現在までに、n=24のGABA作動性抑制神経細胞に対するDA(20μM)の作用を検討したが、興奮性シナプス伝達を遮断した実験下において、Fast-spiking cellの一部が、脱分極からスパイク発射に至った(n=3)。残りのFast-spiking cellは5〜8mVの脱分極を示した。他方、Regular-spiking cellは活動性の変化を示さず、DAの効果はGABA作動性神経の亜型に特異性を示した。
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