抗精神病薬はドーパミンD_2受容体遮断作用を共有しており、統合失調症の病態生理の一部にドーパミン(以下、DAと略記)が関与している可能性が高い。しかし、臨床効果がある一方で、機能異常が想定されている内側前頭前皮質神経回路に対してDAがどのような生理作用をもつか、という問題は未解決である。 平成16年度は、自発性抑制性シナプス後電流および微小抑制性シナプス抗電流に対するDAの効果を解析し、DAがGABA作動性シナプスに対して、GABAの放出を抑制すること、錐体細胞のGABA_A受容体の感受性を増強あるいは減弱する効果を示すことを明らかにした。 平成17年度は、以下の2点について、スライスパッチクランプ法の全細胞記録の手法を用いて内側前頭前皮質局所神経回路を構成しているGABA作動性抑制性神経細胞及びグルタミン酸作動性錐体細胞に対するDA(20μM)の作用を検討した。 1.GABA作動性抑制性神経細胞及び錐体細胞の膜電位に対するDAの効果 (1)GABA作動性抑制性神経細胞:n=58の細胞から記録を行った。亜型別にみると、Fast-spiking cellで3/16、low threshold-spiking cellで4/19、regular-spiking cellで8/23で脱分極からスパイク発火が生じた。すべての細胞においてD_2系受容体を介した効果であった。 (2)グルタミン酸作動性錐体細胞:錐体細胞では有意な膜電位の変化は認めなかった(n=14)。 2.錐体細胞スパイク発火後の後過分極に関係するイオンチャネル膜電流に対するモノアミンの修飾効果 (1)ドーパミン(20μM):膜電流、スパイク頻度ともに変化なし。 (2)ノルアドレナリン(20μM):膜電流を抑制し、スパイク頻度が増加。 (3)セロトニン(20μM):膜電流を抑制し、スパイク頻度が増加。
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