研究課題
基盤研究(C)
【研究目的】産後の母親の抑うつおよび乳児への感情と、乳児の発育と発達との関連を明らかにする。【対象と方法】調査対象は、九州大学病院を受診する妊娠後期の精神面のハイリスク妊婦。ハイリスクの定義は、現病歴か既往歴に精神障害がある、ライフイベントやサポートの欠如など心理社会的脆弱性があることとする。調査項目と時期は、1.日本版エジンバラ産後うつ病質問票(Edinburgh Postnatal Depression Scale : EPDS、岡野ら、1996)、2.母親の児に対するボンディングの障害(赤ちゃんへの気持ち質問票、吉田ら、2003)を出産後1カ月、4カ月、7カ月に、3.児の発育・発達については出生時の体重、アプガールスコア、出産後1カ月の体重、7カ月のデンバー式発達検査の結果と身体疾患の転帰である。【結果】1.産後7カ月まで経過を追えた43例の有効例で、産後1カ月のEPDSが区分点の9点以上は20例(うつ病群)、9点未満が23例(非うつ病群)であった。2.うつ病群の母親のEPDS得点は、産後1カ月で最も高く14点であった。赤ちゃんへの気持ちの得点も同様で産後1カ月は、7.9点で、産後7カ月を除いて非うつ病群に比較して有意に否定的であった。3.非うつ病群とうつ病群の母親の児の出生体重および5分のアプガールスコアの平均は、それぞれ2897gおよび3028g、8.9点および8.5点、出生後1カ月の体重は3940gおよび4059gであった。また7カ月時ではデンバー発達検査での遅れが、うつ病群に1人のみにみられたが、発育・発達とも両群に有意差はなかった。【考察】母親の抑うつや子どもへの感情は、児の体重や身体疾患の脆弱性や発達の遅れの有無という分類には有意に反映されない。母子関係の質的な評価と児の長期予後の調査が重要である。
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乳幼児医学・心理学研究 (印刷中)
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