研究分担者 |
齋藤 利和 札幌医科大学, 医学部, 教授 (50128518)
相馬 仁 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (70226702)
池田 官司 札幌医科大学, 医学部, 講師 (30232193)
山本 恵 札幌医科大学, 医学部, 講師 (90347170)
鵜飼 渉 札幌医科大学, 医学部, 助手 (40381256)
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研究概要 |
神経回路網構築・神経可塑性変化における神経幹細胞の役割を検索する目的で、単層培養法改良法により胎齢13-14日のラット胎仔終脳から得た神経幹細胞を用いて、神経幹細胞の増殖・遊走・分化各機能への抗うつ薬・気分安定薬の効果を評価した。フルオキセチン,パロキセチンは0.1μMで、リチウム,バルプロ酸はそれぞれ300μM,30μMで有意な神経幹細胞分化促進効果を示し、この効果は気分安定薬に比べ抗うつ薬処置群で強かった。また、抑うつ気分や認知機能障害等うつ病と同様の臨床症状出現をみることが多くそのcomorbidityが注目されるアルコール依存症を比較疾患群として考慮し、エタノール投与により神経幹細胞から経細胞への分化が抑制されることを確認した。神経回路網の維持において神経幹細胞からの神経細胞新生と共に重要な役割を担う神経細胞の生存機能についても各薬剤の効果を検討した。1mMリチウム,0.1mMバルプロ酸処置群は30ng/mlのBDNF処置群と同様に、対照群に比べ有意な神経細胞生存機能増強効果を示した。一方、フルオキセチン,パロキセチン処置群では生存機能増強効果を認めなかった。次にこれらの分化促進や生存増強作用と関連する細胞内シグナル伝達系の同定を試み、抗うつ薬によるERKシグナルを介した神経幹細胞分化促進作用が抗うつ効果と、気分安定薬によるPI3K-Aktシグナルを介した神経細胞生存機能増強作用が気分安定効果の発現と、結びついている可能性が示唆された。ヒトでの病態理解への還元を目指す試みとして、海馬での神経幹細胞の増殖・生存の障害を認める精神疾患モデル動物ヘマーキング神経幹細胞を経静脈的に移植し、側脳室周囲および海馬領域への移行を確認した。更なる詳細な検討が必要ではあるが、神経新生障害が関連する病態に対し神経幹細胞移植が治療的役割を担う可能性が示唆された。
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