研究概要 |
【目的】 これまで我々は、統合失調症の神経発達障害仮説に基づくモデル動物である幼若期腹側海馬傷害ラットを作成し、(1)NMDA-antagonist(PCP)投与により移所運動量が増加し、その際、側坐核でのdopamine(DA)流量の増加がないこと、(2)NMDA-glycine site agonist(glycine)の単回腹腔内投与および持続脳室内投与によりmethamphetamine(MAP)誘発性の移所運動量増加が抑制されること、等を確認し、異常行動発現にDA系に加えNMDA系も関与する事を明らかにした。今回は、NMDA受容体のglycine調節部位作動薬(D-serine)と新規抗精神病薬(Risperidone ; RIS, Olanzapine ; OLZ)の効果について比較検討を行った。 【方法】 生後7日目(PD7)、無作為に傷害群と対照群に分け、傷害群にはイボテン酸を注入し両側腹側海馬を破壊した(対照群には人工脳脊髄液を注入)。PD56に浸透圧ポンプを挿入し、D-serine投与群、OLZ投与群、D-serine・Haloperidol ; HPD併用群、D-serine・RIS併用群に分け、4週間に渡り脳室内持続投与を行った(対照群には同様に人工脳脊髄液を投与)。 測定:赤外線式運動量測定装置に移した後60分間(HAB)、MAP投与後90分間の移所運動量を、PD56、PD70、PD84に測定した。 【結果・考察】 PD70・PD84のHAB後・MAP後において、対照群に比し、D-serine・RIS併用群では移所運動量に有意な差は認めなかった。D-serine投与群・OLZ投与群では増加傾向、D-serine・HPD併用群では減少傾向を認めた。D-serine・RIS併用群において過活動を効果的に抑制することが予想されたが、例数が少ないため更なる検討が必要である。
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