研究課題
基盤研究(C)
放射線による神経系細胞の遺伝子損傷修復を検討するため、妊娠17日目のラット胎児脳より培養6日目において全体の約40%がMAP2陽性の神経細胞、約40%がGFAP陽性のアストロサイトからなる混合培養系を確立した。また、対照として、同じラット胎児腹部から線維芽細胞を樹立した。まず、線維芽細胞をガラスボトムディッシュで培養後、0.5〜2Gyの種々の線量でX線照射した。照射後、固定したサンプルにおいて、DNA二本鎖切断で誘発されるヒストンリン酸化(γ-H2AX)および細胞核DNAを免疫蛍光染色した。その結果、種々の大きさ・濃淡からなるドット状のγ-H2AXが細胞核上に出現し、その数は線量に依存して増加した。つづいて、混合培養系の神経系細胞にも同様にX線照射した後、免疫染色を行った。その結果、驚くべきことに、MAP2陽性の神経細胞およびGFAP陽性のアストロサイト共にγ-H2AXが全く染色されないことが判明した。この結果は、線維芽細胞は誘発されたDNA二本鎖切断に対し修復あるいは損傷応答できるが、神経系細胞はその能力が低いことを示唆している。同様な結果は、DNA二重鎖構造を大きく歪めるDNA損傷の修復に関わるヌクレオチド除去修復の場合にも観察された。つまり、神経細胞およびアストロサイトは、同じラット胎児由来の線維芽細胞に比べ、モデル損傷である紫外線DNA損傷の修復能が有意に低下しており、その原因として修復蛋白量の発現低下が示唆された。以上の結果より、神経細胞およびアストロサイトはDNA二本鎖切断に対する修復・応答およびヌクレオチド除去修復の能力が共に減少しているため、これらの関係するDNA損傷を誘発する外的・内的要因に対し脆弱であると考えられ、要因の作用量によっては中枢神経機能に悪影響する可能性も充分考えられる。
すべて 2006 2005
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