平成17年度は、前年度に行った調査をもとに、新たに「発達障害アウトカム包括的評価尺度」を開発した。これは、自閉症を含む発達障害のみならず、注意欠陥多動性障害や、行為障害、不安障害、強迫性障害などの子どもにもみられる精神疾患にみられる行動面、精神症状の評価と、社会的適応レベル、認知機能、および子どもと親のQOLまで含めた文字通り包括的な評価尺度である。この評価尺度を、まず健常児を対象に使用し、尺度の信頼性係数や因子構造および項目分析などを通じ標準化の作業をおこなった。尺度の信頼性係数は全体では0.6程度と低値であるが、これは包括的尺度であるためにやむを得ない問題であり、各下位尺度については0.8〜0.9と良好な信頼性係数を呈した。健常児データの調査結果は、平成17年6月第95回日本小児精神神経学会(東京)にて口演した。また、実際に臨床例への応用をこころみ、自閉症児50例を対象として本評価法を用いて行った。その結果、自閉症に特徴的な症状は年齢が高くなっても同様に認められるのに対し、多動や衝動性といった行動面の問題は年齢が上昇するにつれて頻度は減少していく傾向がみられた。また年齢とともに増加する症状は、不安関連症状であり、不安関連症状はまた養育者が感じるQOLと関連しているという結果が明らかになった。これについては第23回日本小児心身医学会(大分)で口演した。さらに、対象を里親養育をうけている被虐待児に拡大して調査をおこなった。専門里親がケアしている里子には一般より高頻度に行動面の問題が出現していることがわかった。これは第96回日本小児精神神経学会(名古屋)で報告した。平成18年度はこれらの結果をふまえ、対象をより増やすこと、また16年度調査で開発したライフイベント(日常生活上のストレスになるできごと)調査票と組み合わせることにより、自閉症を含む発達障害児の予後に寄与する生活ストレスを抽出するための調査研究を行う予定である。
|