研究目的:本研究は、自閉症およびその周辺の発達障害の発症および予後に寄与する心理社会的要因、特に生活ストレスと発達障害の関連を明らかにすることを目的として行われた。 研究実施計画:自閉症および発達障害の長期予後に関しては知的障害との関連で議論されてきたが、本研究においては、長期予後を自閉症児・者が日常生活の中で経験する生活ストレス(ライフイベント)によって影響されるという仮説の検証を目指した。研究の実施にあたり、(1)自閉症の予後判定のための尺度(特にQOLに着目した尺度)(2)発達障害の早期スクリーニングのみでなくその周辺に発生する子どもの問題行動をひろいあげるための尺度(3)および発達障害児・者とその家族が経験する日常生活でのストレス(ライフイベント)を測定するための尺度を開発することが第1のステップであり、次にそれらの尺度を用いたパイロット研究、さらに大規模集団によるコホート研究を行うことを計画した。本研究で得られたプロダクトは以下である。 研究結果概要: 1.発達障害児・者の予後判定にもちいる評価尺度は信頼性妥当性が認められた。発達障害児者の予後研究においては、単に神経学的あるいは知的機能などの認知的側面だけではなく発達障害児・者およびその家族のQOLをその評価の中心におく必要がある。 2.ライフストレスは家族機能に影響をおよぼし、家族機能は間接的に発達障害児者のQOLのみならず認知的予後にも影響を与える可能性が示唆された。発症要因としてのライフストレスやストレスが予後に影響を与えるメカニズムについては今後の検討が必要である。
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