研究課題
基盤研究(C)
これまで我々は、網羅的スクリーニングにより、抗うつ薬慢性投与により発現量が特異的に変化するラット脳内遺伝子を探索し、前頭葉皮質、視床下部、海馬より707種の抗うつ薬関連候補遺伝子を同定してきた(antidepressant related gene : ADRG#1-707)。さらに、これらの候補遺伝子を効率よく2次スクリーニングするために、ADRG遺伝子をスポットしたADRG microarrayを開発し解析を行った。その結果、抗うつ薬投与により多岐にわたる遺伝子の発現変化が認められた。それらの遺伝子の塩基配列を決定し相同性検索を行った結果、ADRG遺伝子の一部はプレシナプス小胞上に存在し神経伝達物質の開口放出に関与する既知の遺伝子群に属することが明らかとなった。これらのADRGの中にはsynaptobrevin 2(VAMP2)、cysteine string protein (CSP)、synapsin 1、Rab3、Rabl A、synaptotagminが含まれていた。そこで、Western blot法により、抗うつ薬投与による個々のADRGのタンパクレベルでの発現変化を定量した。その結果、抗うつ薬(imipramine, sertralipe)の長期投与によりこれらのタンパクの有意な発現増加が認められた。一方、単回投与では発現変化は認められなかった。次に、抗うつ薬長期投与によるプレシナプス膜上のタンパクであるSNAP25、syntaxinの発現を検討したところ発現変化は認められなかった。一方、小胞マーカータンパクのsynaptophysin、secretograninの発現は、抗うつ薬長期投与により有意に増加した。以上の結果より、プレシナプス小胞上のタンパクは抗うつ薬の作用ターゲットであり奏効機転に関与すること、抗うつ薬投与によりシナプスの数が増加するのではなく、小胞数の増加が増加することが示唆された。
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