【目的】初年度(平成16年度)の研究では、環境刺激の二次性強化獲得のモデルとされる条件性場所嗜好(CPP)実験を用いて、ニコチン(NCT)依存の再発の誘因とされる「NCTの効果に条件づけられた環境刺激」と「NCTの再投与」のCPPの維持過程におよぼす影響を検討した。さらに、その脳内神経学的機序として、条件づけに関与するとされる扁桃体と、脳内報酬系部位である側坐核のドパミン(DA)神経の関与を検討した。【方法】CPP装置を用いてバイアス法によってNCT0.4mg/kgと溶媒を交互に投与して、NCT投与側の区画に嗜好性を示すラットを作成した。そして、NCTによる条件づけ形成後、1、2週、1、2、3、4、5、6ヵ月目に、「環境刺激(区画)」と、「NCTの再投与」の二種類の刺激を提示し、NCT投与側の滞在時間を測定した。その後、扁桃体と側坐核のDA神経を6-ハイドロキシドパミンで破壊し、上記の二種類の刺激によるNCT投与側の滞在時間を測定した。また、CPPの形成と維持における自発運動量(SMA)をSMA測定装置を用いて測定した。【結果と考察】NCTによるCPPは、「環境刺激(区画)」よって、「NCTの再投与」と同程度の強さで6ヵ月間維持されたことから、NCTの効果と連合した環境刺激は、NCT依存の維持と再発に重要な役割を果たすことが示された。また、扁桃体のDA神経を破壊した場合には、環境刺激(区画)の提示によるCPPは減弱したことから、NCTの効果と環境刺激の連合には扁桃体のDA神経が関与していることが示された。さらに、CPPが強度に形成された群では、SMAの増感現象が強度であったのに対して、CPPの形成が軽度の群では、SMAの増感現象も軽度であったことから、CPPの形成過程(環境刺激がNCT効果と連合する過程)とSMAの増感現象には共通した機序が存在することが示唆された。
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