研究課題
基盤研究(C)
【目的】ニコチン(NCT)の強化効果は弱いものの、禁煙の困難さから摂取欲求は弱いとはいえない。この機序を明らかにするために、喫煙時の環境刺激がNCTに条件づけられて摂取欲求を惹起させる機序に注目し、その脳内神経学的機序を検討した。【方法】ラットを用いた条件性場所嗜好(CPP)実験で、NCTに条件づけられた環境刺激によって誘発されるNCT探索行動の特性と、その脳内神経学的機序を検討した。次に、脳内自己刺激(ICSS)実験で、NCTに条件づけられた環境刺激が、脳内報酬系刺激作用を獲得するか否かを検討し、NCTによる条件づけを阻止する薬物を薬物依存の新規治療薬として検討した。【結果】CPP実験では、NCTに条件づけられた環境刺激によりCPPは6カ月間維持され、扁桃体基底外側核と腹側被蓋野のDA神経の破壊によって、NCTに条件づけられた環境刺激を手がかりとしたCPPは減弱したが、NCTの投与によって再現した。ICSS実験では、NCTに条件づけられた環境刺激はICSS閾値を低下させ、条件づけ前に投与したBP897(D3受容体部分刺激薬)0.1mg/kgは、環境刺激によるICSS閾値低下を減弱させた。【結論】NCTに条件づけられた環境刺激は、NCTの探索行動を長期間にわたって維持し、その脳内神経学的機序として扁桃体基底外側核と腹側被蓋野のDA神経が関与していることが示された。また、NCTに条件づけられた環境刺激は脳内報酬系を刺激し、この条件刺激による報酬系刺激作用はBP897によって抑制された。この機序として、条件刺激がNCTの報酬を予測する機能を獲得しなかったことが考えられ、BP897は環境刺激によるNCTの摂取欲求の発現を抑制する治療薬となる可能性が示唆された。
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日本神経精神薬理学雑誌 28
Annals of the New York Acadelny of Sciences (In press)
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Annals of the New York Academy of Sciences (in press)
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日本神経精神薬理学雑誌 25
ページ: 213-219
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