平成16年度は、dizocilpine(MK-801)を用いたてんかん精神病モデルで、てんかん精神病状態の発現過程における海馬歯状回での脳内物質のドーパミン、5-HT、グルタメートおよび電気生理学的指標の変化を検討した。 家兎を用いて急性実験下で、一側海馬歯状回に、脳内微小透析用のマイクロプローブを挿入するためのガイドカニューレに記録電極を組み合わせたものを、また貫通路に刺激電極を植え込んだ慢性モデルを作製した。実験はまずコントロール実験として、5例に脳内微小透析用のマイクロプローブをガイドカニューレに挿入し、2μl/minで人工脳脊髄液を灌流しつつ、対照記録として一定強度の単発刺激を行い、海馬歯状回群で集合スパイク(PS)と集合EPSPからなる貫通路-歯状回反応波を60分間記録した。次にコントロール群5例で腹腔内へ溶媒を投与した。その後反応波をそれぞれ60分間記録した。さらに貫通路に弱いテタヌス刺激を加え、60分間反応波を記録してLTP(長期増強現象)の発現を観察した。この間、実験開始から終了まで継時的にマイクロプローブから海馬歯状回の細胞外灌流液を採取し、ドーパミンと5-HT濃度を同時に測定した。グルタメートについても、別にコントロール群5例で、同様に実験をおこなった。ドーパミン、5-HT、グルタメートの採取は5分ごとに10μlずつおこない、EiCOM社製マイクロダイアリシス分析システムにより測定した。ドーパミン、5-HT、グルタメート濃度は実験開始から終了まで対照記録のレベルで推移し有意な変化は見られなかった。集合スパイク(PS)と集合EPSPは対照記録と比較して溶媒投与後で変化はなかったが、テタヌス刺激後に有意な増加すなわちLTPの発現が見られた。現在さらにdizocilpine投与群について同様な検討を行っているが、まだ一定の結果は得られていない。
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