研究課題
統合失調症などの精神疾患は、多元的(脳の器質的・機能的あるいは心理的・社会的)要因により発症し社会適応が困難になる。精神病は「学習・記憶の病気」という見方もできるのではないだろうか。状況・文脈に合致しない条件付けや過去の記憶の異常想起として妄想、幻覚が繰り返し現れるといったremodelingと考えられるからである。コカインや覚醒剤、麻薬といった薬物中毒は精神依存、幻覚・妄想、逆耐性や履歴現象といった経験と記憶の特殊な関係の現象を惹起する。本研究では精神疾患をもたらす異常可塑性の生体内分子機構を理解するため、サル精神疾患モデルを用いてPETと侵襲的手法とを相補的に研究展開する。慢性覚せい剤投与による逆耐性モデル形成過程において、経時的に全脳レベルでの脳内変化を[^<11>C]標識各種トレーサーを用いた経時的PET受容体研究(ドーパミン受容体密度:線条体外D1受容体密度は[^<11>C]NNC112、D2受容体密度は[^<11>C]FLB457)を推進し生体内での逆耐性の脳内神経機構を解明するための研究を進行中である。行動解析としてビデオ撮影により投与前後のoral dyskinesiaを観察した結果、投与3回目より出現、投与回数とともに増加を示し投与8回でほぼプラトーに達した(200回/分)。自律神経反応モニターとして心拍数や皮膚コンダクタンス(GSR)を経時的に測定した結果GSRでは投与10回目頃より投与前から上昇傾向を示した。受容体PET研究では、薬物依存との関係が示唆されている前頭葉皮質(主溝周辺)でのドーパミンD1受容体密度が覚醒剤投与を重ねるにつれ減少していくことが示唆された。一方、ドーパミンD2受容体は視床で密度が増加傾向にある可能性を示している。
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