研究概要 |
平成18年度早々咬傷事故が所内発生した影響で強制的に実験中止を余儀なくされた。実験停止は11月末まで続き本研究計画が大幅に遅れた。実験中止の影響はPETカメラの不具合を誘発し今も故障が続発し不安定な状況である。平成18年度当初実験計画では、1)上記モデル形成過程での脳内可塑性のPET研究、2)履歴現象の脳機能マッピング、3)上記モデル形成過程での脳内神経伝達物質の相互修飾作用を検討する予定になっていたが、実験中止期間のうちにモデルサルが不慮の死を遂げたこともあり、実験計画を大幅に見直さざるを得なくなった。実験中断の間に出来ることとして、薬物依存の本態とされる特定の薬物への渇望を特徴とした精神依存(薬物を摂取したいという欲求)を動物に再現でき定量できることで有名なサル類を用いた薬物静脈内自己投与実験に関する古典論文(Deneau, Yanagita, and Seevers, 1969年)に準拠し、マカクサルを用いた静脈内自己投与実験用ソフトプログラム開発と3種類のLEDとレバーの敷設された垂直パネル、薬液注入ポンプ作動と連動・制御できるシステムを完成させた。サル類が飼育ケージ内で一定ルール(固定時間間隔(fixed interval, fixed ratio, progressive ratioが選択可能)ごとの有効レバー押し)での反応に呼応した注入ポンプ(飼育ケージ外に設置)作動により薬液が静脈内に留置されたカテーテルを介し一定量注入されるようにプログラムされている。現在、其のシステムを利用しアカゲサルを訓練し、レバー押しと食物報酬のassociation、次いでPR条件で特定の報酬(バナナ・ペレット)にたいしfinal ratioを測定した。Final ratioは其のサルにとっての報酬価値を反映する。この条件で遂行中のPET局所脳血流測定中である。次のステップとして、報酬をfoodからコカインに入れ替え同様の手法でfinal ratioを測定にれがサルにとってのコカインの価値反映)後、遂行時のPET測定データと比較する。其の差分で抽出される脳領域は、単なる報酬系神経ネットワークがマスクされた結果、まさにサルのコカインに対する精神依存に関する部位が含まれていると考えられる。今後実験継続し成果をまとめ国内外学会で発表し、学術雑誌に投稿予定である。
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