研究概要 |
本研究で試作したフラッシュX線管(冷陰極3極管)は高エネルギー放電機構を有し,陽極、陰極、トリガー電極で構成される。このフラッシュX線管のもとで発生するフラッシュX線装置の諸特性は、電極(陽極、陰極)の材質、陽極-陰極間距離、陰極-トリガ電極間距離、真空度の四つの因子により異なる。(1)電極の材質の検討では、セリウム(Ce:原子番号58、融解点795℃)、イッテルビウム(Yb:70、1194℃)、タングステン(W:74、3400℃)で検討したが、充電電圧90kV、真空度(10 ̄^5Pa)の条件のもとで、Wが他と比較し1.3倍のX線強度が得られた。陽極-陰極間の高電圧放電により電子流は陽極先端に集中するが、約9,000回の曝射までは陽極に消耗(溶解)が見られなかったことがX線写真濃度の測定から証明された。(2)フラッシュX線管の焦点の大きさは、陰極材質・陰極角度及び陽極-陰極間距離に大きく影響されるが、今回購入したピンホールカメラを用い焦点測定を行った。陰極材質は陽極材質と同じWで陰極角度50°のもと、電極間距離をパラメータに測定した結果、電極間距離を小さくすることで小焦点の傾向にあったが、プラズマの影響から電極間距離0.9cmで最小の焦点となり、2.0×2.3mmの大きさを得た。(3)曝射時間の測定は応答の速い液体シンチレータ(応答時間:10^<-9>sec)で検出し、デジタル・オシロスコープで測定し波形解析を行った。X線曝射時間は放電時、管電流4×10^4A(瞬間大電流)の条件のもと、半値幅で0.3μsec.、パルス幅10%で1μsec.以下となり、1μsec.以下の曝射時間が可能となった。模擬被写体(メトロノーム、タングステンワイヤの振り子、コップに落下する造影剤、プラスチック弾の物体への衝突)の撮影では、完全静止画像が得られ、ボケ(焦点ボケ・動きのボケ)の少ない高鮮鋭度の画像が得られた。(4)陽極物質(W,Ce,Yb)によるフラッシュX線の線質は結晶分光器で測定し、X線スペクトル分布(連続X線、陽極材質特有の特性X線)から解析した。特性X線Ce(Kα:34keV, Kβ:39keV), W(Kα:60keV, Kβ:67keV)の比較から、Ceは軟X線、Wは硬X線となり、被験者の各撮影部位に適応する陽極物質を選択することで、画質の向上に寄与するが確証された。
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