前年度に引き続き、筑波大学陽子線医学利用研究センターの照射室2(G2)において陽子ビームによる基礎データ収集と解析を継続した。回転ガントリーの回転中心(アイソセンター)に指頭型線量計(M3)を、その直下流にシンチレータ板(SciCCD)をビーム軸に対し約50度傾けて設置し、M3及びビームライン上の線量モニターM2の線量計測と同時に、5m離れたCCDカメラによりSciCCD画像を収集した。並進型クサビ形レンジシフタ(WRS)によりレンジを変えて得られた深部線量分布比較により、シンチレータ光量に対するクエンチング効果の再確認をした。ディスタル端より15mmまでの高LET領域で光量減少が認められ、ブラッグピークで最大約15%の減少であった。また、拡大ブラッグピーク(SOBP)50mmフィルタを用いた実際の治療照射条件で、患者ボーラス及びコリメータを使用して得られた3次元線量分布をM3とSciCCDで測定し、さらに治療計画による計算結果と比較検討する試験を続行した。これに関する他の測定器による結果の比較については、今後も引き続き継続し統計量を多くすることが必要である。また、シンチレータ板とCCDカメラを応用して、陽子線治療用ガントリーに対するアイソセンター確認システムを開発し、その精度評価を行った。その結果、従来の方法と同程度の±0.1mmの精度でアイソセンターの位置決定ができ、数時間の測定時間を30分程度に短縮できることを確認した。さらに、シンチレータバーとCCDカメラの応用により、陽子線ビームに対するスピル間のレンジ変動とビーム強度の相関関係を確認した。これに関しては引き続き研究を継続する予定である。
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