神経受容体に作用する薬物の開発においては、受容体への結合親和性を正確に評価することが重要となる。これに対し、現在行われているラジオレセプターアッセイでは、受容体を単離し、多くの場合低温で化合物との結合性を評価しているため、生体内に存在する神経受容体とは異なる構造をとっている可能性が考えられる。スクリーニングに用いる場合、インビトロで、簡便な操作により受容体結合性を評価できることが1望ましいことから、本研究では、脳組織切片を用いることにより、生体内に近い環境での化合物との結合性を確保しつつ、インビトロで、簡便な操作により受容体結合性を評価できるアッセイ法の確立を目標とした。すなわち、インビトロ、インビボでの受容体結合性と今回確立するアッセイ法での結果を比較することにより、有用性を評価することとした。そこでまず、受容体結合性を評価する化合物の開発を行った。記憶、学習、認知などの脳機能への関与が示唆されているニコチン性アセチルコリン受容体を対象として、最近開発された3-(2-(S)-azetidinylmethoxy)pyridine(A-85380)の誘導体を合成し、そのインビボでの受容体結合性について検討した。その結果、得られた誘導体がインビボでニコチン受容体に高く結合することを認め、本誘導体を用いてインビボとインビトロでの結合性について比較検討できる可能性が示された。さらに、様々な精神疾患への関与が示唆されている脳内セロトニントランスポーター(SERT)に選択的な結合性を有する[^11C]DASBを合成し、健常者および精神神経疾患患者を対象に、そのインビボでの受容体結合性についてPETを用いて検討した。その結果、[^11C]DASBがインビボでSERTに高く結合することを認め、本放射性薬剤を用いてインビボとインビトロでの結合性について比較検討できる可能性が示された。
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