研究概要 |
食道扁平上皮癌(12種)、口腔扁平上皮癌(6種)から樹立された細胞株に放射線を照射し、照射後生存曲線を求め、感受性群、抵抗性群にグループ化した。感受性株、抵抗性株をペアーとして、未照射の状態からそれぞれtRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行った。マイクロアレイ解析は、日立ソフトウエアエンジニアリングで開発された3万個の遺伝子を搭載したオリゴアレイ、口腔扁平上皮癌由来2201遺伝子からなる自家製cDNAマイクロアレイを用いて解析を行った。 その結果、発現上昇していた遺伝子数は総計で感受性株7遺伝子、抵抗性株20遺伝子であった。Real time PCRを用いて検証したところ、27遺伝子のうち14遺伝子がマイクロアレイの結果と一致した。このうち、Cytokeratin 18,DTNBP1は口腔扁平上皮癌由来の感受性株にて発現が亢進し、ASNA1,Tcp20,Cyclophilin F, KIAA0218,HBp17は口腔扁平上皮癌由来の抵抗性株にて発現が亢進した。中でも、Tcp20の発現亢進は著名であり、消化器扁平上皮癌の中の特に口腔扁平上皮癌における放射線耐性機構にて重要な役割を果たし、Tcp20を含めたこれらの遺伝子の実際の臨床における放射線感受性・抵抗性予測マーカーとしての可能性が示唆された。特に感受性株で発現上昇の著しい遺伝子を抵抗性株に遺伝子導入して強制発現させたが、4種類では放射線感受性は変化しなかった。しかし、他の1種類Ku80遺伝子のsiRNA導入により、大幅な放射線感受性の増大が認められた。
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