研究概要 |
膵癌肝転移の画像的特徴の解明-臨床病理組織学的検討との対比- 【目的】膵癌の肝転移には時にAP shunt様の楔状濃染を伴うことがある。本研究の目的は膵癌肝転移の画像所見を検討し、この楔状濃染の意義を明らかにすることである。 【方法】1998年4月から2003年9月までに当院ならびに関連施設で経験した膵癌178例中、画像診断で膵癌の肝転移と診断された53例が対象。男性28例、女性25例、年齢は平均66歳(43歳〜83歳)。肝転移の確診は経過観察でサイズが増大したものを転移とした。全例造影CTならびに造影MRIを施行した。また、53例中27例に血管造影ならびにCTAPを施行した。 【成績】画像上肝転移を認めた53例中50例(94%)は多発例であった。53例中31例(58%)ではすべての転移巣はダイナミックCTあるいはダイナミックMRIで腺癌に特徴的なリング状濃染を呈した。53例中18例(34%)では少なくとも1個以上の転移巣でリング状濃染を示す腫瘤に連続してAP shunt様の楔状濃染が認められた。4例(8%)では多発性のAP shunt様の楔状濃染のみが画像上描出された。この4例では単純なAP shuntであるか肝転移であるかが鑑別上問題となったが、経過観察で腫瘍の存在が明らかとなり肝転移と診断された。結局、楔状濃染の所見は53例中22例(42%)に認められた。 【結論】膵癌の肝転移の多くは多発性であり、しかも高率にAP shunt様の楔状濃染を伴うことが明らかとなった。これは膵癌の肝転移が他の悪性腫瘍の肝転移と比べて肝内の末梢門脈枝に微小な腫瘍塞栓を形成したりあるいはグリソン鞘へ浸潤する傾向が強いためと推測される。特に膵癌患者で肝内にAP shuntを認めた場合には腫瘍自体が描出されなくとも肝転移の可能性があることを認識する必要がある。 本研究の成果は第63回日本医学放射線学会総会(横浜),第90回消化器病学会総会(仙台),第11回肝血流動態イメージ研究会(横浜)(優秀論文賞を受賞),ヨーロッパ放射線学会(ECR 2006)にて報告を行った.
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