研究概要 |
Colon-26腫瘍細胞をBALB/cマウスの脾臓に注入し転移性肝癌を作成した。また、Rat肝に3'metDAB投与による肝癌および種々の悪性度を有する過形成性結節(境界病変に相当すると考えられる)を作成した。これらの肝細胞性結節性病変内およびその周辺肝の血管および血行動態を蛍光色素投与下に蛍光生体顕微鏡で観察・分析した。さらに蛍光粒子を門脈内注入あるいは静注し門脈支配や動脈支配を検討した。その後同部を組織学的に検索し免疫染色法で新生血管数と血管新生因子の有無・多寡を検索し、in vivoで観察された血行動態と比較した。一部には血管鋳型を作成し上記の結果と比較した.現在得られている結果は以下に要約される。転移性肝癌では、腫瘍内血洞は既存の類洞が変化し形成される機序が推察された.また転移性肝癌の発生初期にはこれらの類洞を介する腫瘍栄養が存在するものと考えられたが,腫瘍の成長に伴い発達する腫瘍内血洞の血行支配については門脈の明らかな関与を証明できなかった.現在、経動脈性蛍光粒子注入による解析を検討している。類洞が変形・拡大し腫瘍内血洞が形成される過程のなかでこれらの血洞は流出系として変化していくことが推察された。現在、免疫粗織学的検討で腫瘍内血洞が肝類洞由来であることを実証中である。肝細胞癌・境界病変モデルでも同様の肝類洞の変形・拡大による肝細胞癌の腫瘍内血洞が観察された。上記と同様の方法で境界病変から肝細胞癌での結構支配の変化を検討し、境界病変では結節内に肝類洞の存在と順行性の血行が観察されるのに対し、肝細胞癌では類洞は見られず、動脈からの蛍光粒子が多数観察されること、腫瘍内血洞が流出系脈管と考えられる所見を得ている。現在これらの発癌初期の血行動態・腫瘍内血洞の由来について引き続き検討中である。
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