研究概要 |
マウス実験肝癌について、肝癌の発育による多段階的な血行動態および腫瘍血管新生の変化を蛍光生体顕微鏡と免疫組織化学的検討で解析した。colon-26癌細胞の脾臓内注入でマウスに転移性肝癌を作製し蛍光生体顕微鏡観察と免疫組織化学染色で検討した。免疫組織化学染色としてはCD34, ICAM-1 and α-SMAを検討した。これらをもとに転移性肝癌における血管新生の解析と微小循環の変化を検討した。蛍光生体顕微鏡による腫瘍血管形態・周辺類洞との関連・微小循環は以下の4型に分類できた。すなわち、転移性肝癌では、180μm前後までは明らかな腫瘍血管新生はみられず、周辺よりの拡散で栄養を受けるものと考えられた。その後290μmまでは腫瘍内に取り込まれた(残存した)肝類洞から類洞血流と同様の門脈血行を受けることが明らかとなった。その後、次第に腫瘍血管形成が生じ、当初はこの腫瘍血管と周辺肝類洞の結合を通じて門脈血流が主に腫瘍に流入するが、次第に新生動脈が増加し、動脈血行が増加し、最終的に、腫瘍は動脈血流で栄養され、腫瘍内血洞から周辺肝類洞へと還流することが明らかとなった。この研究により転移性肝癌では腫瘍血管新生とともに血行支配は多段階的に変化することが明らかとなりこれまでの報告の差異の原因を明らかにする結果と考えられた。また転移性肝癌に対する診断・治療の改善に有用な知見と考えられた。ラットに3'metDABで肝細胞癌・前癌病変を作製し同様の研究を行い、腫瘍内血洞と微小血行動態の多段階的な変化を認めている。現在実験をほぼ終了し資料を解析中である。これらの実験的検討と並行して、臨床例における肝細胞癌の多段階発癌の血行支配の多段階的変化が磁気共鳴診断法による結節の信号強度変化と相関することを明らかとした。
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