研究概要 |
変異型ras遺伝子を保有する癌細胞は、増殖因子/チロシンキナーゼ型受容体からの増殖シグナルに依存せず、P13キナーゼ/Rafを介した増殖シグナルにより異常増殖し、放射線抵抗性の表現型を呈することが明らかにされている(Grana T.M. et al.: Cancer Res.,62:4142-4150,2002)。そのメカニズムの一つとして、変異型ras/Rafからのシグナルによって活性化されたDNA topoisomerase IIを分子標的とするアドリアマイシン(ADM)或いはエトポシド(VP-16)併用による放射線の抗腫瘍効果増強のメカニズムを、変異型ras遺伝子を保有し、その他の遺伝的背景を同一にしたDNA組換えヒト肺癌細胞及びそれらのヌードマウス移植腫瘍を用いて、明らかにすることを目的にした。 ヒト肺癌A549細胞を用いてtopoisomerase IIを標的とするamrubicin及びその活性代謝体amrubicinolの放射線感受性に対する増感効果をcolony形成法により調べ、同薬剤とADM及びVP-16の4剤について増感効果をD_0 valueで比較した。その結果、4剤とも同等の約1.3倍の増感効果を示した。又、apoptosis及びNecrosisの誘導動態においてapoptosisは単独処理と併用処理とによる有意差が認められなかったが、necrosisは1.3-1.6倍の有意差が認められた。 ras遺伝子及びp53遺伝子以外の遺伝的背景を同一にしたDNA組換えヒト肺癌細胞の作製について、現在、変異型ras(mras)/正常型p53(wtp53)を保有するヒト肺癌A549細胞を作製している。
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