研究概要 |
岐阜大学腫瘍総合外科で切除され,Western blot法によりVEGF蛋白解析を行った肝癌症例中,動注CT,MRIが施行された20例余りを対象とした.Western blot法では,CTと同じ割面から均等にサンプルを採取し,電気泳動像のヒストグラムから擬似定量化しVEGF発現指数を求めた. CTAP,CTHAにおける肝癌の造影強度指数(CEI)を単純像からのCT値(HU)増加分として求めた.さらに,肝癌の濃染強度,濃染の不均質度を視覚的に3段階で定性評価した.T1強調像,T2強調像,三相造影像を撮像した、肝内における肝癌信号の高低の指標として,肝癌-周囲肝信号コントラストノイズ比(CNR)を求めた.また,腫瘍信号の不均質度の定量的指標として,肝癌の信号標準偏差比(SDR)を求めた.さらに,肝癌の信号強度,信号不均質度を視覚的に定性評価した. 肝癌の腫瘍径はVEGF発現指数と有意な正の相関を示した腫瘍分化度とは有意な相関を確認しなかった.肝癌のCTHAにおける動脈性濃染強度はVEGF発現指数と負の相関を示した.肝癌の濃染不均質度は発現指数と正の相関を示した.Opposed-phase T1強調像における肝癌CNRはVEGF発現指数と負の相関を,T2強調像CNRは発現指数と正の相関を示した.T2強調像SDRは肝癌VEGF発現指数と正の相関を示した.肝癌信号の不均質度は発現指数と正の相関を示した. 我々は,これまでのVEGFに関する分子病態学研究との関わりにおいて,誠に興味深い結果を得た.肝癌の動脈性濃染強度はVEGF発現強度と負の相関を,T2信号強度は発現強度と正の相関を,T1信号強度は負の相関を示した.不均質な濃染,不均質なMR信号を呈する肝癌では強いVEGF発現が認められた.以上の結果は臨床放射線画像所見がVEGF関連の分子病態と無関係でないことを示している.
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