研究概要 |
「目的」磁気共鳴法(MR)による"神経細胞再生"に関する画像解析法の開発とそれによる損傷脳回復の機構の解明、さらには臨床的展開を目標とした。具体的には、以下のようなニューロンの再生過程を画像解析する多技法磁気共鳴法方法を確立し、動物実験脳損傷モデルで神経再生の解明を行う。さらには、これらの方法を臨床装置へ適用し、臨床例での応用・解析を試みる。即ち、(1)ニューロン自体の電気的興奮をMRIにて画像化する。(2)拡散強調テンソル画像法を発展させ、神経線維の再生の方向性や連絡性を画像化する、(3)2次元磁気共鳴スペクトル法(2D-MRS)の改良にて、神経細胞特有のアミノ酸(NAA、Glutamate等)や神経伝達物質やセカンドメッセンジャーの分布を解析し、再生ニューロンの代謝活性を解析する。(4)水分子をtracerとする非侵襲的脳血流画像法を得て、ニューロン再生との再開通組織血流量変化の関係を解析する。 「方法・結果」本年度は昨年度に開発したMR法によるニューロン再生画像解析法を用いて、主に動物基礎実験への適用の検討を行なった(動物実験用NMR装置(4.7T,Biospec,Brucker))。また一部は臨床装置への適用を行った。 (1)神経細胞興奮画像法によるニューロン活動の解析:独自に開発したManganese enhanced MRI(MEMRI)は、神経細胞の興奮にて生じるシナプスでのCa^<2+>の出入りと共約して動くMn^<2+>を媒体としてEPI画像を撮像する方法であるが、今年度は実験虚血モデルでその有用性を検討した。その結果、MEMRIで検出された病巣は、拡散強調画像や脳血流画像での検出範囲よりも広く、いわゆる可塑性領域をより忠実に反映しうることが確認された。また、この方法では、ラットで、脳皮質、海馬、臭球などの神経線維走行や微細な層構造の描出が可能であった。 (2)超高速拡散テンソル画像法による神経線維走行画像(Fiber tracking Imaging)の実用化:6軸に拡散用傾斜磁場を加えたEPI拡散強調画像からテンソル画像を作成し、その連続性を追跡して脳内神経線維の3次元方向性の画像描出法を確立した。主に臨床装置での解析に用いたが、今後fMRIとの組み合わせで脳機能の解析に用いられることが示唆された。 (3)2次元磁気共鳴スペクトル法(2D-MRS)の実用化:従来の1次元MRS法では不可能であった神経細胞特有のアミノ酸(NAA、Glutamate等)の分布の画像解析を可能にした。3.0Tの臨床用装置でその有用性が発揮できることが判明した。 (4)非侵襲的脳血流画像法による再生脳組織の血流再開通の検討:血管内の水分子を指標とする非侵襲的脳血流画像法を可能にした。ニューロン再生を脳血流再灌流の観点から解析できる可能性が示された。
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