大動脈瘤に対してステントを人工血管で被覆したステントグラフト(SG)を留置する治療は、低侵襲的な治療法として腹部大動脈瘤を中心に普及しつつある。しかし術前後の瘤内圧の変化と瘤径あるいはSGの種類との関連性などについては不明な点が多い。本研究では各種SGの差異について実験的ならびに臨床的に検討した。まず動脈瘤を想定した循環モデルを作成し、SG留置前後における瘤内圧を連続的に測定した。その結果、SGの留置により脈圧の減衰が認められたが、脈圧はSGの種類や動脈瘤モデルの壁の硬さに大きく影響されることが確認された。 臨床的検討ではSG留置術を行った腹部大動脈瘤のうち、分岐型SGを用い、経時的に経過観察したSpiral Z-stent graft (SZ-SG);14例、Zenith stent graft (ZE-SG);29例を対象として、瘤径の変化ならびにエンドリークの有・無と瘤径縮小との関係を両SGについて検討した。SZ-SG群では4/14(28.5%)で瘤径の縮小、6/14(43%)で瘤径の不変、4/14(28.5%)に瘤径の拡大がみられた。瘤径拡大群の4例中3例、瘤径不変群6例中1例にエンドリークがみられた。ZE-SG群では21/29(72%)で瘤径の縮小、7/29(24%)で瘤径の不変、1/29(3.4%)に瘤径の拡大を認めた。瘤径拡大群の1例と瘤径不変群7例中の1例にエンドリークがみられた。エンドリークを認めなかった37例(SZ-SG;10例、ZE-SG;27例)について平均瘤径の推移を両群で比較検討したところ、SZ-SG群では有意な縮小を認めなかったが、ZE-SG群では1年後に有意な縮小を認めた(p<0.005)。ZE-SGはSZ-SGに比べてエンドリークが少なく、瘤径縮小が高率に認められ、両SG間での差異が示唆された。
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