研究概要 |
胸部X線画像と腹部CT画像を対象として、DCT(Discrete Cosine Transform)法とDWT(Discrete Wavelet Transform)法を用いて、電子すかしを埋め込む方法を開発した。DCT法やDWT法では、係数の取りうる値が0または1ではなく、有理数であるため、すかし情報に対応して0/1を埋め込む方法は利用できない。そこで、ある係数に対してレンジRを定義し、このレンジRの前半と後半ですかし情報を判断する方法を考案した。この方法をレンジ法と呼ぶ。 DCT法では、係数を第1次係数C1,1に埋め込むことにした。また、DWT法では周波数軸を等しい帯域幅で均等分割するサブバンド符号化に基づいている.分解された各サブバンドは,分解レベルとLL,HL,LH,HHの周波数での記号を組み合わせて表される。LLは、水平・垂直方向ともに低域通過フィルタリングを行ったものであり、この部分にすかし情報をレンジ法で埋め込んだ。 電子透かしエラー訂正コンピュータを購入し、電子透かしが埋め込まれた画像から透かし情報を検出するプログラムを開発した。DCT法とDWT法を比較すると、非可逆画像圧縮に対する耐性を比較し、DWT法はJPEG2000の非可逆圧縮に強く、DCT法は、JPEGの非可逆圧縮に比較的強い耐性を示した。電子すかし情報を埋め込んだ画像に対して、医師による画質評価では、3段階から4段階のDWT法による電子すかしでは、アーチファクトが強く認められた。 以上より総合的に判断すると、DWT法による階層3〜4のLL成分にRange=8で埋め込む電子すかしが望ましいと考えられた。
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