研究概要 |
"生存シグナル"や"死のシグナル"の発現が低酸素環境下でどのように修飾されるかについて明らかにするために、常酸素下での"生存シグナル"や"死のシグナル"の変化について検索するとともに、臨床材料を用いて低酸素で誘導される中心分子として転写因子であるHIF-1が同定されたことから、HIF-1αの発現と子宮頸癌III期の放射線治療成績との関係について検索し、以下の点を明らかとした。1)上皮細胞増殖因子受容体であるEGFRならびにHER2/neuの2つの受容体からのシグナルを同時に阻害することで相乗的な放射線感受性の増強が常酸素下で得られるかどうかを検索したところ、ZD1839はEGFRのりん酸化を抑制するだけでなく、HER2/neuのりん酸化をも抑制し、EGFRとHER2/neuを同時阻害することによって相乗的な放射線感受性の増強が認められた。2)子宮頸癌III期でのHIF-1α,p53,bax,bcl-2の強発現の頻度は、45%,58%,39%,39%であった。また、28%の症例にHPVの感染が認められた。HIF-1αの発現とその他の蛋白ならびにHPV感染との間に相関は認められなかった。HIF-1αの発現と患者の年齢、全身状態、リンパ節転移の有無、ヘモグロビン値、SCC抗原値との間にも有意な相関は認められなかった。また、大きな腫瘍の方がHIF-1αの発現率が高かったが、症例数が少ないことから有意差に到達しなかった。HIF-1αの発現と再発様式について検討したところ、HIF-1α強発現例で再発率が有意に高かった。また、10年無再発生存率ならびに10年無転移生存率はHIF-1α低発現例で有意に良好であったが、10年無局所再発生存率には差異は認められなかった。
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