研究概要 |
1)ZD1839とTrastuzumabを用いた上皮細胞増殖因子受容体の二重阻害による放射線増感 細胞周期に明らかな変化が認められない濃度の阻害剤と3時間接触させることによって照射によって誘導されるEGFRのリン酸化はZD1839で、HER2/neuのリン酸化はTrastuzumabで抑制された。また、ZD1839はEGFRのリン酸化の抑制とともにHER2/neuのリン酸化をも抑制した。AktとMek1/2の照射による活性化も、ZD1839とTrastuzumabを併用することで抑制された。いずれの阻害剤も放射線増感効果を示したが、二重阻害では相乗的な放射線増感効果が認められた。 2)低酸素下での放射線感受性の修飾 A549細胞を用いて低酸素(5%O_2ならびに1%O_2)による放射線感受性の低下をin vitroの系で検索した。細胞増殖能は5%O_2下では抑制されなかったが、1%O_2下では明らかな増殖抑制が認められた。照射24時間前から細胞を低酸素環境下に置き、放射線感受性をコロニー形成能で検討したが、5%O_2下ならびに1%O_2下ともにPEに変化は認められず生残率の増加も認められなかったことから、低酸素によって放射線抵抗性を獲得した証左は得られなかった。しかし、1%O_2下では明らかに小さなコロニーの数が増加していた。 3)子宮頸癌組織のHIF-1αと放射線治療成績 放射線単独治療を施行した子宮頸癌III期例でのHIF-1α,p53,bax, bcl-2の強発現の頻度は、45%,58%,39%,39%であった。大きな腫瘍の方がHIF-1αの発現率が高かったが、症例数が少ないことから有意差に到達しなかった。HIF-1αの発現と再発様式については、HIF-1α強発現例で再発率が有意に高かった。また、10年無再発生存率ならびに10年無転移生存率はHIF-1α低発現例で有意に良好であったが、10年無局所再発生存率には差異は認められなかった。
|