研究概要 |
我々は既に、温熱により誘導されるHeat Shock Protein(HSP 70)の生体防御作用を検討し、予め、2日前に加温することにより誘導されたHSP 70により、マウス下肢筋疲労を防御することが出来ることを報告した。また、この疲労の防御は、HSP 70が疲労物質としての乳酸の産生を遅延させることによる結果を得ている。この乳酸産生の遅延は、運動能力の向上につながり、温熱療法によるスポーツ界への大きな貢献である。本年は、温熱療法をトレーニングに取りいれ、温熱トレーニング法を確立することを目的とした。 1.低温ミストサウナでの連続加温の条件決定-マウスでの検討 1)マウスを38,39,40℃のミストサウナで15-20分/日を1回、1,2,3週間と連続加温してHSP 70の発現が最大となる条件を検討した。その結果、血中リンパ球のHSP 70は39℃加温2週間で最大となり、下肢筋肉中HSP 70は、39℃加温3週間で最大となった。 2.レスリング部トレーニングにおける温熱トレーニング導入による運動能力の向上の検討 1)日々の運動トレーニングのみの群とこれに温熱トレーニングを取りいれた群による運動能力の比較、温熱トレーニング群には、日々の運動トレーニング後2.5週間毎日低温ミストサウナ39-40℃で15分間加温すると共に、運動能力テスト2日前に遠赤外線加温装置で40分間加温した、 2)レスリング部員に対する運動能力テストとして、腕立て伏せ、無酸素パワーテスト、3分間ペダリングテストおよび、各テスト後の「乳酸値を測定し比較した。その結果、日々の運動トレーニング群に比し、練習後2.5週間ミストサウナで加温した群はHSP 70の発現、NK活性ともに有意に増加した。更に、遠赤外線加温装置での加温により、HSP 70の発現、NK活性はより有意に増加した。また、運動能力テストについては、腕立て伏せは有意に増加、3分間ペタリングテスト、加温トレーニング群の方が、運動終了後の乳酸値は有意ぶ低く、また、翌日の乳酸値も低値であったことから、疲労の回復がはやいことが示された。腕立て伏せの回数も増加、3分間ペダリングテスト後の心拍数が減少するなど温熱トレーニングで有意に運動能力の向上が認められた。
|