研究概要 |
目的:慢性虚血状態の脳組織において、予後、治療、管理の観点から、MTRとMRSデータによるコンビネーション測定法の有用性の検討を行うこと。またPETデータをgold standardとした時の、MRS値やMTR値の関係も明らかにすること。 対象と方法:慢性内頚動脈閉塞症及び、慢性中大脳動脈閉塞症の患者15名に、MR装置を用いたMRIとMT基礎データの計測と、PET装置におけるCBF,CMRO2,OEF検査を、合計6時間以内に施行した。MTR画像作成後、MTR画像とPET画像上の同一部位にROIを置き、病側のMTR値とCBF,CMRO2,OEF値をそれぞれ比較した。PET値に基づき、軽度虚血域、中等度虚血域、高度虚血域(不可逆性変化域)に分類し、それぞれのMTR,MRS値の関係を検討した。また、PET値とMRS値の間の関係も検討した。 結果:正常域と比べて、軽度と中等度の虚血域では(PETのパラメーターからは可逆的な虚血域であるが)、正常範囲内のNAA/Cr値と、正常範囲内のMTR値を示した。軽度虚血域では、Cho/Cr値は正常範囲内で、中等度虚血域では、幅広いばらつきを示したが、平均値は上昇していた。高度虚血域では(PETのパラメーターからは不可逆的な虚血域であるが)、NAA/Cr値は低下、Cho/Cr値は上昇(中等度虚血群より低下傾向にあったが、両群で有意差は無かった)、MTR値は低下を示した。慢性脳虚血域においては、MTR値とCMRO2値の間で、良好な相関が認められた。また、CMRO2値とNAA/Cr値の間にも、良好な相関が認められた。 結論:MTR値とMRSデータをコンビネーションで使用すれば、慢性虚血性脳組織を、PETのパラメーターと同様に、3段階の虚血グループに分類できる可能性が示唆された。慢性虚血性脳組織におけるMTR値とCMRO2値との間には相関関係が認められ、NAA/Cr値はCMRO2値とも相関があった。MTRとMRSのコンビネーション測定法は、慢性脳虚血の血行力学的動態を評価するのに有用であった。
|