[対象とPET測定]健常志願者6名およびアルツハイマー病患者6名に対して脳内ムスカリン神経受容体の標識薬剤であるN-メチル3-ピペリジルベンジレート([11C]3NMPB)を用いたPET測定を行った。測定は[11C]3NMPBを静脈投与し、直後から約90分間の動態測定を行った。PET測定中、動脈採血を行い脳への入力関数とした。 [解析方法]関心領域を線状体、帯状回、後頭葉、側頭葉、前頭葉、頭頂葉、視床、橋、小脳に設定し、各脳組織の時間-放射能濃度曲線(TAC曲線)を得た。各脳組織のムスカリン受容体結合能(BP)をそれぞれ以下の方法で求めた。1、TAC曲線および動脈血中放射能濃度曲線を入力関数とした3-コンパートメントモデルを使った最小二乗曲線近似でBPを算出、2、小脳のTAC曲線を間接的な入力関数とする最小二乗曲線近似からBPを算出、3、静注後60〜80分の小脳と各脳組織の放射能集積比からBPを算出(簡便法)。 [結果]線状体、帯状回、後頭葉、側頭葉、前頭葉、頭頂葉、視床、橋、小脳の順にBPが高値であった。1、2、および3、の各方法で求めたBPはin vitroにおけるヒトの受容体濃度(文献値)と有意な相関を示し、相関係数は各々r=0.92、r=0.97、r=0.90であった。簡便法でも定量測定が可能であった。 [考察]本研究は[^<11>C]3NMPBとPETを用いてin vivo脳内ムスカリン神経受容体結合能の定量評価ができることを示した。さらに簡便法によりPETの1回撮像でBPの定量評価が行えることを示した。また、初期アルツハイマー病患者のBPは健常者と統計学的な有意差はなく、依然としてムスカリン神経受容体が保たれていることを示唆していた。
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