本研究は、臓器移植とりわけ生体肝移植では血液型不適合移植の成績が極めて悪く、その主な原因は抗血液型抗体による激烈な急性拒絶反応であることから、この抗血液型抗体産生の機序を解明することを目的とする。当初は、血液型抗原に対する抗体産生を観察するため、健常人の末梢血から採取したリンパ球をin vitroで血液型抗原を抗原刺激として培養し、そこから集めた培養上清中の抗体価を測り、limiting dilution assayなどの手法で抗血液型抗体を産生するリンパ球がどのくらいの割り合いで存在するのかを調べる予定であったが、リンパ球を血液型抗原で培養して抗体産生をおこさせるシステムが以外と難しく、いろいろ手法を変えて実験中である。 また、自己血採血で不要になった赤血球を血液型毎にプールし、洗浄赤血球を低浸透圧法で溶血させ、この赤血球膜タンパク抗原をELISAプレートに直接まいて固相化し抗血液型抗体を測定する実験では、従来赤血球をそのまま使用してした凝集法よりも、格段に微量の抗体でも検出できるメリットがある。また、IgGとIgMに分けて測定することも可能である。この赤血球膜タンパク抗原の血液型抗原として、肝移植患者の周術期および術後長期経過した患者の血清を用いて、各種抗血液型抗体価の推移を測定しているが、血液型抗原である糖鎖そのものをELISAプレートに張り付けて抗体価を測定した方が、より感度が高く、より定量性もあることが新たに発見し、現在そのシステムで抗体価を測定し、臨床で実際に行われている赤血球凝集反応と比較検討することを進めている。 また、検体提供者や家族の人権および利益の保護状況についてですが、検体に関しては匿名化であり外部に対しては一切氏名を公表していない。
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