研究課題
基盤研究(C)
我々は、マウス移植実験において、拒絶および免疫寛容時のDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子解析を行った。拒絶においてはIFN-g誘導遣伝子が強く発現しいた。免疫寛容時においては免疫抑制は予想に反して、これらの遺伝子群の発現が持続したが、免疫寛容特異的候補遺伝子も報告した。これらの基礎データをもとに、本研究では臨床検体でそれらの遺伝子の意義を確認することを目的とした。当初、臓器移植(肝臓移植)での解析を予定し、免疫寛容における遺伝子群を解析することとした。しかし、肝臓移植では免疫抑制剤のほか多数の薬剤を使用し、かつ、臨床背景が多岐にわたるため、実際上解析が困難であった。そこで、臨床上背景因子が比較的単一である大腸癌肝転移症例で検討した。大腸癌肝転移は以前より、被膜形成のあるものとないもので宿主と腫瘍との免疫反応が異なることが示唆されていた。そこで被膜ありなしの大腸癌肝転移症例で腫瘍の網羅的遺伝子解析を行った(n=15)。RNAは顕微鏡下に腫瘍細胞のみをマイクロダイセクションを用いて抽出し、PCRにより増幅した。これをAffymetrixU34 GeneChipを用いて、約34000の遺伝子ESTを網羅的に解析した。コンビュータソフトウエアGeneSpringをもちいて階層的クラスタリング解析をした後、d-Chipをもちいてさらに解析した結果、被膜(-)群に比較して被膜(+)群において有意に発現の上昇している遺伝子が115個プロファイルされた。それらを詳細に検討した結果、ケモカイン遺伝子群をおおく含むことが判明した.この中には、以前のマウス移植拒絶実験において強く発現の上昇していたIFN-g誘導ケモカインが含まれ、しかも恒常的に発現の上昇が被膜のある大腸癌肝転移で認められた。この事実は、被膜のある大腸癌肝転移では宿主と癌の間で、移植拒絶反応に類似した免疫反応が起こっていることが示唆される。今後、免疫組織学的にこの現象を解明し、新規治療開発にむけて展開する予定である。
すべて 2005 その他
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