研究概要 |
実験計画に沿って、本年は主に実験ツールの作成および解析系(in-vivoおよびin-vitro)の洗練に費やされた。特記すべき事項を列挙する。 1)ラットを用いた血管平滑筋細胞の増殖モデルの開発:主にラットの頚動脈バルーン損傷モデルを作成。mRNAの抽出cDNA合成、タンパク質の抽出を行った。以下に示す測定系の確立により、本モデルにおける動脈硬化病変の発生機序を解析する予定である。 2)血管平滑筋細胞初代培養の確立と細胞内シグナルの解析:ラット血管平滑筋細胞初代培養系は一般的に10%FCS加DMEMにより行われるが、FlowCytometryによると非常にheteroな細胞群と考えられた。しかし、ある種の増殖因子を加えることで比較的均質な細胞群となることを見いだした。今後、これらを解析して、血管平滑筋細胞の分化・脱分化について検討したい。 3)YY1カスケードを応用した平滑筋細胞増殖抑制法の確立:Rb1,YY1についてはPlasmidを分与を受け、大量調整した。しかし、初代培養系に対する遺伝子導入は導入効率が数%であるため、実験におけるsignal/noise比が稼げない。これを解決し実験系をrefineするため、様々な導入法を検討中である。特に血管平滑筋細胞に特異的に遺伝子導入を現在検討中である。 4)動脈硬化病変の場を作り出す平滑筋細胞の役割についての検討:本年度は特にこの細目について重点的に研究を進めた。サイトカイン・ケモカイン・増殖因子、転写因子、細胞内骨格、細胞外マトリックス等の遺伝子発現を解析するため、LightCycler Technologyを応用し、real-time PCRにより約150種類の遺伝子について定量的な測定系を確立した。 以上の結果を踏まえ、来年度はさらに実験を進める予定である。特に、定量的PCRの系の確立は大きな前進と考えている。
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