ラット大動脈由来VSMCを用いて分化・脱分化・増殖という観点から定量性PCR(qPCR)、蛍光免疫染色、増殖解析、アポトーシス解析、flow cytometry等の方法を確立した。qPCRではSM1、SM2、SM22alpha、SMemb、calponin、caldesmonなど200種のプライマー設計・最適化に成功。免疫染色ではAlexa蛍光色素、デジタル画像処理技術を導入、蛍光顕微鏡下で共焦点画像取得を最適化した。分化型マーカー発現に寄与するAscorbic acid(AA)を10%FCS DMEM培地で再評価、刺激後4時間でSM1、calponinの遺伝子発現は上昇、SM2発現は認めず、SMemb発現を認めたことから、AA添加のみでは分化コントロールは困難と考えられた。培養皿コーティングの差に注目しplasma処理とgelatin coat培養皿でVSMCの反応を比較したが、ECMではcollagen typeIIIがコーティング群で増強。接着因子である、Integrin beta1、Integrin alpha5もコーティング群で上昇した。このコーティングに加えてAAの添加を検討。コーティングの有無によりAAに対する反応性も違うことを明らかにした。elastinはplasma処理では濃度依存性に発現が増強されたが、gelatinコーティングでは増強されなかった。細胞と培養皿の界面における反応性の違いがVSMCのECM産生に関与することが示唆された。更に理解をすすめ、組織工学におけるschafoldの表面設計の改善につなげたいと考えている。残念ながら、初代VSMC培養系への遺伝子導入は、実験に耐えうる導入効率に至らず、細胞内シグナルの修飾実験に至らず。しかし、磁気ビーズを用いることにより、初期培養系VSMCに対して20〜30%の導入効率を達成した。
|