研究概要 |
直腸癌に対する術前放射線化学療法の有用性をとくに治療感受性に重点を置き、分子生物学的アプローチにより検討中である。 1)当科で行っている化学療法(PMC療法)と術前高線量短期間照射を行った直腸癌2症例、術前化学療法のみの大腸癌8症例における発現遺伝子を解析した。すなわち補助療法前後での癌組織をマイクロアレイを用いて5-FUの代謝酵素を中心とする遺伝子発現の違いを検討した。直腸癌1例においては腹膜播種再発後のサンプルもえられたため、再発前後でのアレイ検索も追加した。現在結果を解析中であるが、RNAサンプルのqualityに問題があり、十分な情報が得られておらず、更なる症例を蓄積中である。 2)放射線感受性に関して、大腸癌細胞株を用い、マイクロアレイでの検討を行った。大腸・直腸癌細胞株5株をの放射線感受性をX線照射後の増殖能、apoptosisで評価し、高感受性株(DLD-1,colo205,LoVo)、低感受性株(CaR-1,colo201)に分類した。選択した放射線高感受性株に対するX線反復照射(2Gy×10回)による放射線抵抗性亜株の樹立した。抵抗性亜株と感受性親株とのマイクロアレイの結果、抵抗亜株で高発現を示した遺伝子、感受性親株で高発現を示した遺伝子をそれぞれ同定した。現在実際の臨床検体による再現性をRT-PCRにて確認しており、照射適応のマーカーとなりうるか検討中である。 3)放射線照射後の血管新生因子VEGFについても検討した。Human sampleにおいて照射後の腫瘍では治療前後で有意にVEGFが高発現しており、大腸癌細胞株においても同様の結果を示した。現在、human sampleにおける血清中のVEGFと臨床データをあわせて解析中である。
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