固型臓器移植の生存・生着率が向上している中、小腸移植の臓器移植における技術の確立はいまだ行われていないと言っても過言ではない。その原因は小腸が人体最大のリンパ組織であるに他ならず、移植小腸における強い拒絶と感染が原因であり、現在の薬剤による非特異的免疫抑制には限界があり、ドナー特異的免疫抑制の技術導入が望まれる。我々はかねてより今回ドナー特異的免疫抑制を強力に誘導する方法として、ドナー骨髄細胞の移植同時門脈内投与における効果とメカニズムについて解析を行った。 ACIからLEWという高反応(ヒトアロ小腸移植想定)モデルにおいては常用量のタクロリムス(Tac)では制御不能の拒絶がおこるが、Day0の骨髄移植と常用量Tacの併用にて常用量Tac+高容量ステロイドを上まわる免疫抑制効果がえられた。 骨髄移植では移植腸管内リンパ球の減少およびIFNγとIL-2のdown regulationが確認されドナー骨髄移植においてレシピエント由来のグラフト浸潤リンパ球のTh1/Th2バランスにシフトがおこっていることが判明した。 また、骨髄細胞より樹状細胞(DC)を単離培養し、その分化度にしたがって未分化/分化の細胞を集積し、骨髄細胞の代わりに同系移植モデルに投与した。それにより未分化DC+Tac群で骨髄細胞投与と同等以上の生着効果がえられる一方、分化DC投与群においては過度の免疫抑制が原因と考えられるGVHRによる死亡例がみられた。 以上より骨髄細胞門脈内投与は小腸移植においてドナー特異的免疫抑制により生着延長をもたらす事が判明し、またその効果は主として未分化DCによるものであることが判明すると同時に、分化DCによるGVHR誘導という側面も有することが見出された。
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