研究課題
(目的)膵脾合併移植の際に、脾臓の容量を変え、拒絶・GVHD共に発生しない至適な条件を明らかにし、臨床応用が可能なドナー特異的免疫寛容の誘導法を開発する。(方法)動物は、DAラットをドナーとしLewisラットをレシピエントとした。Lewisには移植手術の4日以上前にストレプトゾトシンを静注し随時血糖が350mg/dl以上であることを確認し、糖尿病とした。マイクロサージャリーの技術を用いてDAより全膵・十二指腸を摘出後、Lewisに移植した。グラフトの腹部大動脈、門脈をそれぞれレシピエントの腹部大動脈、下大静脈に端側吻合し、十二指腸はレシピエントの十二指腸に側々吻合した。脾合併移植を行う群と行わない群を作成し、術後の生存日数、グラフト生着日数を観察した。術後は体重、血糖値を測定し随時血糖が300mg/dlを超えた時点を拒絶と判定した。(結果)(1)DAラットとLewisラットのhigh responder combinationで膵移植を行うと、膵グラフトの拒絶、機能廃絶が術後平均13.0±3.6日で起こる事が分かった。(2)膵脾合併移植群では、21匹中3匹で術後20日を超えても血糖の上昇のしないラットを確認し、このグラフト生着延長効果は膵単独移植群では認められなかった。脾臓により膵グラフトの免疫不応答が誘導された可能性が示唆された。(3)レシピエントの生存期間は膵単独移植群で平均159.4日、膵脾合併移植群では73.2日と短い傾向にあった。膵脾合併移植群ではGVHDなどの発症が、レシピエントの生存期間を短縮させた可能性が考えられた。(結語)脾臓合併移植によりグラフト生着は延長し、免疫不応答の誘導の可能性が示されたが、生存期間は短縮した。今後脾グラフトの容量を減少させ、膵グラフトの長期生着に必要充分、かつ安全な容量を明らかにする。