研究課題
(目的)膵臓移植におけるドナー特異的免疫寛容の誘導を目指し、脾臓合併移植による膵グラフトの生着延長効果とその機序について検討した。(方法)動物はDAラットをドナー、Lewisラットをレシピエントとし、レシピエントには術前ストレプトゾシンを静注し糖尿病を誘発した。ドナーから膵脾十二指腸を摘出後、レシピエントの腹腔内に移植した。膵単独移植群(P群)と膵脾移植群(S/P群)を作成し、それぞれにFK506を術後4日間投与した群(FK4d群)と無投与群(FK0d群)を作り、計4群に分けた。術後は血糖が300mg/dlを超えた時点を拒絶と判定した。またS/P群について術後5日目に脾グラフトを採取し、RT-PCR、FACS、免疫染色を用いて調節性T細胞を観察した。(結果)(1)S/P+FK4d群で膵グラフトの生着が延長した。(P+FK0d群:11.7±2.9日、P+FK4d群:12.3±2.7日、S/P+FK0d群:13.5±3.7日、S/P+FK4d群:22.8±7.9日)(2)RT-PCRにて、S/P+FK0d群、S/P+FK4d群とも脾グラフト中に調節性T細胞に特異的に発現するFoxp3遺伝子の発現が認められた。(3)FACSによってS/P+FK0d群の脾グラフト中の調節性T細胞が反応性に増加している事が確認された。(無処置DAラットの脾臓:3.94%、S/P+FK0d群:7.78±2.41%、S/P+FK4d群:2.82±0.88日)(4)免疫染色でS/P+FK0d群、S/P+FK4d群とも脾グラフト中にFpxp3抗体で染色される細胞を認め、S/P+FK0d群で多い傾向にあった。(結語)脾臓合併移植と短期免疫抑制により調節性T細胞が誘導され、膵グラフトの免疫不応答が獲得できる可能性が示唆された。
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