研究概要 |
本研究では長期生着した移植腎(とくに20年以上)に対し生検を行い、種々の分子の発現を免疫組織化学、In situ hybridization等の手法を用いて解析し、同時に末梢リンパ球におけるregulatory T細胞の比率と比較することにより、長期生着の組織学的および免疫学的特性を見出すとともに、得られた結果をから長期生着の手段を検討しようとする計画であった。しかし研究を進めるにつれ、移植腎に障害を与える大きな要因として、シクロスポリン、プログラフといった投与されている免疫抑制剤カルシニューリンインヒビター(CNI)の影響が大きな問題となることがわかってきた。現時点で研究の対象を20年以上生着症例に限定するとCNI使用以前の症例となってしまい、この大きな要因が除外されてしまうこととなる。そこで当初の計画より対象を若干修正し、移植後10年後を中心としたCNI継続投与症例とし、16例(平均生着期間10年、7-14年)の腎移植症例に対し移植腎生検を行い、HE,PAS,PAM,MTC染色により検討を行った。その結果、生検の組織像は、いずれも種々の程度の糸球体の硬化閉塞、細動脈壁の肥厚、間質の繊維化、尿細管密度の低下を認めた。原疾患の再発を疑われるものもあったが、糖尿病性の変化は比較的軽度であった。CNIによる変化としては細動脈中膜の肥厚など慢性血管毒性が目立った。CNI長期投与による腎毒性回避のため、導入期の抗体製剤の投与や他の新たな併用薬使用による、CNIの減量・中止が必要であると考えられた。
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