透析療法は進歩しているものの、腎不全患者の予後は未だ非腎不全患者に比べ格段に不良である。その原因の一つとして、現行の透析療法では除去できない尿毒症性物質が多数存在し、末期腎不全患者では透析療法を行っているにもかかわらず、これら分子の大きな尿毒症性物質が体内に蓄積しつづけているということが明らかにされつつある。 そこで、本研究では蛋白結合率の高い尿毒素であるインドキシル硫酸の輸送体であるヒトOAT-3遺伝子を高発現させた培養尿細管細胞を用いて、我々が開発したハイブリッド型人工腎臓に培養し、腎不全モデル動物の血中インドキシル硫酸濃度を低下させることができるか否かを明らかにすることを目的として、以下の研究を行った。 1)申請者らが、これまで開発してきたハイブリッド型人工腎臓システムにこの細胞を培養し、これを用いて測定したIn vitroにおけるインドキシル硫酸クリアランスは38ml/min/m2、対照細胞を使用した場合の約8倍であった。volume markerとして同時に添加したイヌリンのクリアランスはほぼゼロであり、本システムによる基質輸送能には基質選択性が見られた。 2)更に正常イヌを用いた安全性評価を行った。平均4時間の装置装着を行ったが、有害反応として血小板減少が見られたたものの、ごく軽度であり、出血など大きな合併症はみられなかった。認容性は総じて以上から良好と判断した。 4)これらと並行して腎不全におけるIS蓄積の意義を検討するために、IS添加時の大動脈平滑筋細胞増殖への影響を検討した。これによりIS蓄積が、平滑筋細胞を増殖させ、腎不全患者において動脈硬化を増強させる可能性があることを明らかにした。
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