研究概要 |
今回我々は、標準的治療法が無効な進行再発消化器癌に対する腫瘍細胞と樹状細胞の融合細胞ワクチンの第I相臨床試験を終了した。さらに化学療法と融合細胞ワクチンの併用療法に関する基礎的検討を行った。 (1)癌細胞と樹状細胞との融合細胞ワクチンを用いた臨床試験: 倫理委員会の承認のもと、癌細胞と樹状細胞を融合させた細胞融合ワクチンの第I相臨床試験を標準的治療法が無効な進行再発消化器癌13例を対象に施行した。腫瘍細胞は、手術時の摘出腫瘍を酵素処理して用いた。樹状細胞は、末梢血単核球をサイトカインカクテル(GM-CSF,IL-4,TNF-α,IL-1β,IL-6,PGE2)で刺激し誘導した。その結果、いずれの症例も重篤な副作用を認めなかった。治療効果はPR1例、SD5例、PD7例であった。PRおよびSD症例において、ワクチン投与後Th1系サイトカイン(IFN-γ、IL-2)の増加ならびにTh2系サイトカイン(IL-10,IL-4)の低下を認めた。さらに、PR,SD症例において、免疫抑制因子である血中IAPおよびTGF-βの低下を認めた。これらの結果から、融合細胞ワクチンの安全性ならびに抗腫瘍免疫の誘導能が確認された。 (2)融合細胞ワクチンと化学療法との併用療法に関する検討: マウスの肺転移における、融合細胞ワクチンと化学療法剤(TS-1,5-FU,CDDP)の併用療法の検討を行った。腫瘍細胞はMC38を用い、樹状細胞は骨髄細胞をGM-CSFとIL-4で刺激培養して作成した。マウスにMC38を尾静脈内投与した後、TS-1+融合細胞、5-FU+融合細胞、CDDP+融合細胞と融合細胞、TS-1、5-FU、CDDP単独投与群を比較検討したところ、各併用群は単独群に比較して有意に肺転移数が減少した。さらに化学療法剤との併用群でも脾臓のCTL誘導能の上昇が認められた。以上の結果から、融合細胞とTS-1,5-FU,CDDPといった化学療法との併用療法の有用性が示唆された。
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