研究概要 |
近年、未知の腫瘍抗原を含めた複数の腫瘍抗原に対する抗腫瘍効果を期待した癌 ワクチン療法として、腫瘍細胞そのものを腫瘍抗原とみなし、樹状細胞に感作する試みが行われている。今回我々は、バイオプシーのような少ない腫瘍サンプルからのワクチン療法の試みとして、腫瘍抽出mRNAを樹状細胞に導入する癌ワクチン療法の開発を目指し、まずその基礎的検討を行った。 (1)樹状細胞への遺伝子導入法の確立 従来から使用されているエレクトロポレーション法では,導入効率が約10%と低く,細胞へのダメージも大きかった。今回我々は,安定したスクエアパルスを発生できる新しい機器を導入した。これにより、遺伝子導入効率は30%以上に改善され、細胞へのダメージも激減した。 (2)樹状細胞への複数の癌遺伝子導入の試み WT1,NY-ESO-1,Her2,CEA等の複数のmRNAを樹状細胞に導入し、細胞内での遺伝子および蛋白の発現を検討した。その結果、複数の遺伝子および蛋白の発現を確認できた。 (3)マウスを用いたmRNA導入樹状細胞の抗腫瘍効果の検討 腫瘍細胞から抽出したマーカー遺伝子(WT1,NY-ESO-1,Her2,CEA)を含む全mRNAを樹状細胞に導入し、腫瘍特異免疫の誘導を検討した。その結果、導入遺伝子特異的CTLおよび腫瘍細胞特異的CTLの誘導能が検出され、抗腫瘍免疫の誘導が確認された。
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