今回我々は、腫瘍抽出mRNAを導入した樹状細胞ワクチンの効果を検討した。さらに腫瘍細胞と樹状細胞の融合細胞ワクチンについても検討を行った。以下概要を年度別に記す。 平成16年度 1.腫瘍抗原遺伝子導入樹状細胞の抗腫瘍効果に対する基礎的検討: 樹状細胞への導入効率の優れたダメージの少ない遺伝子導入法として、リポソームに遺伝子を封入しこれをElectroporationで樹状細胞内に取り込ませる方法を開発した。 次にマウスを用いてヒトCEA遺伝子導入MC38腫瘍細胞mRNA導入樹状細胞の、転移予防効果をペプチドパルスDCと比較検討し、肺転移数が有意に減少することを確認した。 2.融合細胞ワクチンの基礎的検討として、IL-12およびIL-18遺伝子導入融合細胞ワクチンの抗腫瘍効果を検討した。まず樹状細胞と腫瘍の融合細胞作製法を改良した。マウス肝転移モデルにおける、IL-12およびIL-18遺伝子導入融合細胞ワクチンの抗腫瘍効果を検討した。その結果、融合細胞ワクチン投与により、IFN-r産生、MHC class I拘束性CD8陽性CTLの誘導が確認され、さらに肝転移予防効果および治療効果が証明された。 平成17年度 1.腫瘍抗原遺伝子導入ヒト樹状細胞のCTL誘導能に関する検討 ヒト末梢血単核球から誘導した樹状細胞に、腫瘍組織(MKN45)から抽出したmRNAを導入したところ、in vitroでCTLの誘導が確認された。 2.癌細胞と樹状細胞との融合細胞ワクチンを用いた癌免疫療法 倫理委員会の承認のもと、癌細胞と樹状細胞を融合させた細胞融合ワクチンの第I相臨床試験を標準的治療法が無効な進行再発消化器癌13例を対象に施行した。その結果いずれも重篤な副作用は認められず、治療効果はPR1例、SD5例、PD7例であった。
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