強力な抗原提示細胞である樹状細胞は悪性腫瘍に対する細胞免疫療法の中心的存在となっているが、未だ樹状細胞を体外で分裂増殖させる方法が発見されておらず、その利用に困難を来たしている。本年度の研究内容では、培養中のマウスES細胞にマウス骨髄細胞由来樹状細胞(BM-DC)の核を移植することにより、ES細胞由来樹状細胞(ES-DC)の作成を試みた。マウスのES細胞として129svを、feeder cellとしてSTOを利用し、LIFを添加したES細胞培養液にて培養した。樹状細胞はマウス骨髄細胞を採取し、GM-CSFとIL-4にて1週間培養した後にmetrizamideによる比重遠心分離にてpurifyした。誘導したマウス骨髄由来樹状細胞核をマウスES細胞129svに移植するため、HVJ(Hemagglutinating Virus of Japan)Envelope VECTORを用いた細胞膜融合を行った。この方法により、マウス骨髄由来樹状細胞核を有するマウス129svES細胞が作成可能であったが、このBM-DC核移植ES細胞はその後、LIFを含まずGM℃SFとIL-4を添加したES細胞培養液による培養にて細胞の分裂増殖を認めず、やがて死滅した。現在までに体細胞核をクローン技術を利用して卵母細胞に移植して分裂した胚盤胞からES細胞(Nuclear Transfer-ES)を誘導する方法が成功しているが、in vitroで培養中のES細胞に体細胞の核移植を行い分裂増殖するNT-ES細胞を作成した報告は認められておらず、本方法でのES-DC細胞の分裂増殖誘導が技術的、科学的に困難であることが現時点で判断された。 今後の展開としてまず体細胞核を卵母細胞に移植して胚盤胞を作成してからNT-ES細胞を作成し、そのNT-ES細胞を分裂増殖させて機能的ES-DCの誘導を試みる方法が考えられる。
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