研究概要 |
平成16年度の研究にて研究者は質量分析計(LCQイオントラップLC/MSシステム)を用いた独自のスクリーニング法を開発し、2つのBRCA1-BARD1の基質を同定した。また、蛍光標識二次元ディファレンスゲル電気泳動解析システムを用いたプロテオミクス解析から、さらに1つの基質を同定した。このうち16年度はNucleophosmin/B23(NPM)を主体に解析を行った。17年度はプロテオミクス解析から同定したもう一つの基質であるRNAポリメラーゼのサブユニットであるRPB8を主体に解析を行った。2D-DIGEにてBRCA1存在下にDNA傷害によってユビキチン化される蛋白質としてRPB8を同定。内因性、過剰発現、リコンビナント蛋白にてRPB8とBRCA1-BARD1の結合を確認。過剰発現系でRPB8はBRCA1-BARD1によりin vivoにてユビキチン化した。大腸菌より精製したリコンビナントRPB8もBRCA1-BARD1によりin vitroにてユビキチン化した。FLAG-RPB8安定的発現HeLa細胞株を作成、UV照射10分後のRPB8のユビキチン化を同定。このRPB8のユビキチン化はsiRNAによるBRCA1のノックダウンによって抑制された。ユビキチン化されないRPB8の変異体(5KR)を作成し、安定的発現細胞株を作成した。RPB8-5KRは野生株と同等にRNAポリメラーゼII, IIIに結合し、ポリメラーゼ活性を有した。RPB-5KR細胞株は、UV照射に対する感受性が著明に更新した。上記の原因としてUV照射後にRNA pol IIがDNA傷害部にstuckしていることがわかった。これらの結果は現在投稿中である。BRCA1はRPB8のユビキチン化を介して転写共役DNA修復にかかわっており、染色体の安定性に寄与していると考えられる。
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