大腸癌組織浸潤リンパ球(TIL)由来細胞傷害性T細胞(CTL)株がHLA-B46拘束性に認識するp53ペプチド断片(p53_<377-385>)を既に同定した。このペプチドが、乳癌患者(104人)の23%および自己免疫疾患(50人)の32%の血清によって認識される事を見いだした。他方、健常人(5%)、アトピー患者(4%)、前立腺癌患者(0%)血清では頻度が低かった。この抗休は対応する固相化ペプチドで吸収されたが、固相化した対照ペプチドやリコンビナントp53蛋白質では吸収されなかった事。このことから、抗原特異性が証明されたと同時に、このペプチドに対する抗体はp53蛋白質を認識しないことが分かった。一方、p53蛋白質に対する抗体が12%の乳癌患者血清中に検出され、このうちの1/3のみに抗p533_<377-385>抗体が検出された。さらに、手術時(または前)に採血した乳癌患者血清中の抗p53ペプチド抗体と予後との間の関連性をしらべたところ、癌のステージ、あるいは再発の有無を基準にした場合、どちらかというと予後が良い患者血清中で抗体価が高い傾向が認められた。p53蛋白質に対する抗体は予後が悪い患者血清中に検出されることが報告されており、これらのことから、p53_<377-385>ペプチドに対する抗体は予後予測因子となり得る可能性が示唆された。次年度は、血清中のp53蛋白質およびそれに対する抗体との関連などを解析し、抗ペプチド抗体の腫瘍免疫における役割を解明したい。これと平行して、p53オーバーラップペプチドに対する反応性についても検討し、p53_<377-385>、との関連を調べた上で、同様に腫瘍免疫における役割について検討する。
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